先生と生徒





社会科の永倉先生と野球部の原田くん





永倉センセと巧くん





「センセー。」


また来た。


「これ、教えてください。」


ばさっ、と粗雑に教科書を開く。
指差したのは、今日の一限に教えたばかりのところ。


「原田、お前授業聞いてたんか?」

「聞いてました、頭に入んなかったけど。」

「 ・・・・それは聞いてないんと変わらんぞ。」

「まあ、いいでしょ。早く、これが仕事だろ。」


このクソ生意気なガキは、原田巧クン(17) 俺の教科担当のクラスの生徒。
去年副担任をしてから、どうも懐かれたようだ。
しかし実際、こいつに懐かれても、嬉しいのか悲しいのか微妙なラインだ。
かなり扱い難いのは確かだし。


「センセー、て最初、体育教官だと思ってた。」


社会科担当とかマジ意外。と、小さく笑いながら言う。
原田は、真顔になっているときなど、こちらが驚くほど大人びた顔をする時があるが、普通に笑う姿は年相応に幼い。


「ええから、ほれはよう、解らんとこどこや。」

「え、あ、ここです。」

「あ、それはなー、・・・前にやったときにエドワード・コークておったやろ?」

「・・・あ〜、はい。」

「それが何か主張しとったの覚えとるか、」

「ああ、解った。」

「じゃろ?」

「だから、ここが間違ってるから、こっちのが正しいってことなんですよね。」

「そうそう。」


こうやって、原田は度々解らないと言ってやってくるのだが、教えれば覚えは早く、吸収も良い。
授業さえ真面目に聞いていてくれたらわざわざここに来る事もないだろうに・・・。
俺、どっかで指導間違ったかな。


「原田〜、お前スジええんじゃから、授業ちゃんと聞いとけや。」

「・・・・・聞いてるつもりですけど、」


原田はこっちを見もせず、問題に向かっている。
この態度のデカささえなかったら可愛い生徒なんじゃけどなあ。










ウッカリ浮かんでしまいました。
有りですかね、こういうの。

write 070329