四 月 の 暖 風 と さ く ら と 嘘 と そ れ か ら 、




桜吹雪がはらはらと風に舞う。
その下を通る自分に纏わり付く花弁が鬱陶しい。
桜は綺麗だが、あまり好きではない。

陽射しが冬よりも強くなってきて、仄かな暖かさを感じる。
柔らかな風と、気温が、俺を包む。
何だか、あたたかな湯に揺蕩うような心地だ。

雪が解けたように、筋肉繊維から滲む、力が、疼く。
腹から這いずり揚がってくる何かが、背筋を、肩を、腕を、緊張させる。
ポケットの中の白球を、ぎゅっ、と二本の指で確かめた。

これが、確かなものだ。

俺の。

きっと、確かな。


「―――― 巧!」

「 、豪。」


こちらに向かって、豪が走ってくる。
追い付いてきて軽く肩を叩く。


「何、ぼーっ、としとるんじゃ。」


何の屈託もなく、にかっ、と微笑む。
それは、どこか、春の日差しに似ていた。















white.20070401