01:掠れた声(おんじとおみず)
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※大学生のおみずとおんじです。 午前5時。 目覚ましが鳴ったわけでもないのに、スッ、と目が覚めた。 上半身だけ起き上がると、少し鈍い痛みが頭を襲い、片手で額を押さえた。 昨日飲みすぎた記憶だけはしっかりと残っている。 そうだ、瑞垣。 * 昨夜、酒を持って現れたのは瑞垣だった。 近くのコンビニで買ってきたのだろう、ビニール袋いっぱいのアルコールと、これまたビニール袋いっぱいのつまみ類。 片手でそのふたつの袋をぶら提げて、もう片方の手には煙草を握っていた。 何の連絡もせずにいきなりの訪問だったから、 何かあったのか 、と尋ねたが、 何でもねぇよ 、笑って流された。 そして、 ほら 、とふたつのビニール袋を俺に押し付けると、俺を押し退けて部屋にずかずかと踏み込んでいく。 部屋に入るなり、出しっぱなしにしているこたつに入り、 早く飲もうぜ 、と急かした。 そういや、昨夜は少し寒かった。 で、何だかんだで飲み始めると、最初瑞垣は俺にやけに絡んで色々聞いてきたが、段々酒が回ってくると、ぽつぽつと愚痴り始めた。 酔った時の瑞垣の話は脈絡がないので、何の話をしているのか意味不明だったが、ずっと話を聞いていくと、だいたい理解できてきた。 要約すると、付き合っていた彼女に二股かけられてて、それに気付いて彼女を問詰めたら、その二股相手の方が本命で、『ごめんなさい』って、振られてしまって、そのやりきれなさを誰かに当たり散らそうと思って、酒を持ってやってきた。と、いうことらしい。 ・・・・うわあ・・・・。 最初は饒舌に愚痴を発散していた瑞垣だが、段々話が進むにつれて口数も少なくなり、視線も落ちていった。 いつも自信家でヒネてて小生意気な瑞垣(こんなこと本人に言ったら何されるかわからないので直接言ったことはない)が、珍しくしおらしくなっていたので、何だか可哀想になってきて色々言って慰めながら、勧められるままに酒を飲んで・・・。 * やたらと酒を飲んでいたところまでは覚えているが、その後の記憶が完全になかった。 はあ、とため息を吐き、額を押さえていた右手を脇に下ろす。 すると、掌に思いがけないやわらかい感触がする。 驚いてベッドの横を見ると、瑞垣が丸まって眠り込んでいた。 すやすや、と気持ち良さそうな寝顔は、普段よりもずっと幼くて、可愛らしくすら見える。 掌は瑞垣の頬に乗ったままだが、瑞垣は一向に起きる様子はなく、寧ろ寝息を立てて熟睡モードだ。 あんまりにもすっきりとした顔で、気持ち良さそうに寝ているので、二日酔いで鈍い頭痛がする身としてはかなり腹立たしく、むくむく、と悪戯心が沸いてくる。 指でその頬を抓んで、軽く引っ張ってみた。 しかし反応がないので、さっきより強く引っ張ってみたが、 むにゃむにゃしていて全然起きる様子はない。 何だか面白くなってきたので、今度はおもいっきり鼻を抓んでみた。 初めのうちは普通に寝ていたが、段々苦しくなってきたのか、眉根を寄せてむずがり出した。 いいかげん起きると思い手を離すと、突然瑞垣が寝返りをうってこちらに寄ってきた。 正直焦った。 「うわっ。」 すると、何故か瑞垣はそのまま俺の腰に抱きついたまま寝就いてしまった。 ・・・・抱き枕か。 聞き取れないが、何だかむにゃむにゃと寝言を言っている。 かなり熟睡している。 しかも、がっちりと腰に巻き付かれていて、このままでは身動きが取れない。 腕を離して、瑞垣を引き剥がしてしまおうとするが、中々取れない。 しょうがないので、瑞垣を起こすことにした。 「おい、・・・瑞垣。」 軽く揺さぶって呼び掛けてみるが、熟睡している瑞垣は中々起きない。 段々と揺さぶりも強くなる。 「おい、瑞垣、起きろ。」 しかし、瑞垣は起きる様子もなくぐっすりと眠っている。 そんな様子に、起こしている方は多少イラついてもくる。 「俊二く〜ん、起きてー。俊ちゃん朝よ〜。俊二ー、おい、俊!起きろや!」 もう半ば意地になって呼び掛けていると、もぞもぞと瑞垣が動き出した。 「起きたか、」 「ん、・・・・」 ぎゅう、と強く抱き締められた。 まだ寝惚けてるなコイツ。 「おい。」 「何やぁ、・・・秀、吾・・・うっ、さい。」 ん? コイツマジに寝惚けとるわ。 「おい、瑞垣、俺門脇と違うぞ。」 笑い声になりながら、俺に抱きついたままの瑞垣を揺さぶりながら呼び掛けた。 すると、勢いよく瑞垣が飛び起きた。 「お、やっと起きたな。」 「な、・・・海、音寺・・・?」 寝起きの瑞垣は声が少し掠れていた。 きっと昨夜の飲みすぎで、喉が酒焼けしたのだろう。 ぼーっ、とした目で俺を見ている瑞垣は、まだ寝惚けているように見える。 white.20070430 |